名文メモブログ#政治と文学

‪@meibunnmemo ‬ツイッターしてます

中学受験をしてよかったこと

以前「裕福な虐待」ということで中学受験についてややネガティブな記事を書きました。予想以上に多くの方に読んでいただき「あぁ中学受験って興味を持っている人が多いんだなぁ」と実感しました。そこでネガティブなことを書きすぎたというちょっとした反省と、また今年受験していく教え子たちを見ていると何か書きたくなり、公開する次第です。

 

中学受験をしてよかったことを感傷的に、しかしできるだけ一般性を持たせながら書き綴りたいと思います。感傷的は自分のために、一般性はこれを読み、中学受験を知りたい人のために。

 

なお前提として僕の母校は偏差値65前後の私立中高一貫校です。(雑誌「東洋経済」の「最難関大学合格者数」で30位以内の学校です。)

 

一言で良かったことを言えば「自由」です。

 

①自由な時間

高校受験がないということはそのぶん、ぽっかりと時間が少年少女たちの上にぽっかり落ちてくるということです。最近は受験指導のために時間を割く学校もあるのでしょうが、僕の母校はそこまででなかったような。もちろん宿題や模試はありましたが、やるかどうかは本人次第です。

 

僕の好きな小説に南アフリカの小説家J.M.クッツェーの書いた「マイケル・K」という小説があります。そのなかに「ポケットの外にあるような自由な時間」という表現がありますが、まさにそんな感じです。その時間をどう使うかは生徒次第です。(できるだけ親御さんには干渉してほしくないなと思います)

 

バンド、読書、プログラミング、スポーツ、美術…なんでもよいでしょう。できれば何かを生み出し、かつ没頭できることを思いっきりやるべきです。

僕は詩を書いていました。たまたまそれが全国的な賞をいただき、とても貴重な経験になりました。

 

今の時代なら起業や海外留学もいいかもしれません。

 

なにかを思いっきり生み出す。その経験は受験でもかなり役立ちます。

 

②高い教師陣

これも学校によりますが、やはり教師陣は高い能力、高学歴が多いです。ざっと先生たちの学歴を思い出すと東大修士、京大、慶應、早稲田…

学歴の高さと授業力の高さは比例はしなくとも、相関関係はあるでしょう。なにより受験の体験談をそのまま聞けるというのは貴重です。

またやはり教養豊かな先生の講義というのはおもしろいものです。振り返ってみれば先生たちの授業は一部、大学レベルの話までされていたような。

 

例えば世界史で「家内制手工業」「問屋制手工業」、「工場制手工業(マニュファクチャア)」「工場制機械工業」という産業革命の過程を習うと思います。僕は日本史の授業で「実は日本では江戸時代までに工場制手工業(マニュファクチャア)まで進んでおり、産業革命まであと一歩だった。」という話を聞いてなるほどと思った記憶があります。

 

 また僕が司馬遼太郎のエッセイを読んで「外務省機密漏洩事件」に関心を持って現代社会の先生に質問しに行ったら、山崎豊子の「運命の人」を紹介してもらい、さらに授業で扱ってもらい、おもしろく学ぶことができました。

 

詩を国語の先生に見せたら、新人賞をとっていた詩人のかたにつないでもらい、その先生を通じて詩の添削をしてもらいました。

 

すべてよい経験です。

そして既存の教科書から一歩出た知識を得るという「自由」を獲得する経験でもありました。人が知らないことを僕は知っている。僕の知らない世界に僕は行ける。その当時の僕はたぶんそんなことを無意識に感じながら先生と話していました。

 

ここに書いたことはおおむね多くの私立に当てはまるのではないでしょうか。

 

また親御さんとしては「高い学費払っているんだから勉強してよ」と思うかもしれません。

が、入った学校は全員が受験に合格した子たちです。公立に比べれば校内順位を上げるのはなかなか難しいのではないのでしょうか。

僕の感覚ですが、「入学以降かなり真面目に勉強している」は1割、「まぁまぁ真面目」4割、「真面目と不真面目の間」5割かな。とくに中3、高1は僕自身勉強した記憶はありません。

(僕は文学と歴史書に没頭していたので、国語と社会は特に勉強しなくても高3で偏差値70をキープしていました。その反動で高三では数学と英語に悩まされましたが)

 

しかし高2の後半、高3になるとスイッチが入り、多くが必死に受験勉強し難関大学に合格します。浪人しても東大や医学部、早慶、マーチに受かっていきます。

 

大切なのは高3までに受験のエンジンをかけられるような基礎学力づくりです。高2までで切羽詰まって成績を上げようとしてもあまり意味がない気がします。

僕は勉強しなくてもいいと言ってるのではなく「基礎学力」は必要だと言っています。

数学の公式とその証明、英単語と英文法(丸暗記ではなく論理的に理解したうえで)、国語は漢字や社会科学のワードの理解。これらは必要です。

 

また思いっきりやりたいことをやってから受験勉強に打ち込んだ方が、子供の集中力は上がると思います。やりたいことをやらせてあげてください。子供は思いっきりやる代わりに、やったら勉強してください。

 

子供を無理に管理してるとヘルマン・ヘッセの「車輪の下」の主人公みたいに死にますよ。